読書の夜明け。
いやー、久しぶりに寝ずに読んでしまった。
『屍人荘の殺人』 今村昌弘著
ネタバレする気はサラサラない。書物、特にミステリではネタバレほど禁忌なモノはない。でもネタバレしないで語るのは難しい。だから、感じたままに書こうかな、今回は特に。
ハードカバーで全316ページ。さほどの文量ではないと思う。...個人的に。そしてミステリ好きなら馴染み深い王道の本格派作品。
とにかくサラサラ読めてしまう。なにが?どこが?と聞かれると難しい。ただ手が止まらない。湯本は文章の流れで作家を選り好みする傾向がある。屍人荘は割と好みだ。でも『割と』なのだ。なのに文字の上を滑るように読める。そしてあっという間に終わってしまう。
正直、荒削りではあるなとは思った。ツッコミたい所もある。ただこの文章の力はなんだ?この目を惹き付ける力はなんだ?
方向性は違うけれど、乙一氏の作品に触れた時を思い出した。乙一氏の初見は『GOTH』だった。その時の感覚に似ているのだ。次に呼んだのは『ZOO』だった。この時、『乙一』という作家が恐ろしく思えた。今後どんな作品を生み出すのかと、末恐ろしいと本気で鳥肌がたった。
今村昌弘氏もそうなるのだろうか。
『屍人荘の殺人』これは序章なの?まだ指揮者がタクトを構えただけ?オーケストラや観客は、すっと息を飲んだだけ?答えは今村昌弘氏の次作だけが知っているんだなぁ。あー、不思議。
オススメ度は高い。周りにオススメしまくりたい。でも個人的にはミステリを素通りした人にはおずおずとしか勧められない。この作品は、ミステリやホラー、スプラッタ等に少しだけ耐久性がなくてはいけないと思う。あくまで個人的に、だけれど。
以前、島田荘司氏の『占星術殺人事件』を無防備に勧めたところ、感想は『怖い』だった。ミステリやホラー、スプラッタへのちょっとだけの耐久性はこのジャンルには必要不可欠なのだと痛感した。だってミステリって大抵人死ぬし。大半のミステリにでてくる探偵達は被害者がいないと動けないのだ。解決する事件には時に残虐性もあるし猟奇性だって大いにある。そんな作品が溢れているジャンルだから。
『屍人荘の殺人』は面白い。それが率直な感想で個人的な感想。
どう感じるかは読んでみてほしい。すぐ見つかる、書店の目立つところに屍人荘は佇んでる。
書店巡りを趣味にしてる湯本だけど、かなり長い間、書店の特等席に屍人荘が佇んでるのは間違いない。辻村深月氏の『かがみの孤城』とだいたいセットで並んでる。全国の書店がそうなってるかは知らんけども。止まらなくなるから立ち読みはオススメできない。
個人的には『屍人荘の殺人は』オススメ。
今村昌弘氏の作品として考えたら10段階なら、7辺りのオススメ。なぜなら『屍人荘の殺人』は今村昌弘氏の処女作だから。次作でどうなるか?そこが重要だと思うから。
一端のミステリ好きが好き勝手書いてるだけだけど、もし誰かの世界が広がると嬉しいです。以上、『屍人荘の殺人』読書感想文でした!
湯。